ディリラム1
ディリラム1。
2006/04/25

画面下にSSが隠れています。構図を思いついた方が先だったので、SSが後付けなわけですが、 完成はSSの方がはるかに早かった(笑)
なんかディリラム話というよりは、ディリータがラムザに萌えている話になってる気がします。
恋じゃなくて萌え。どうなんだそれ。
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貪った唇を解放した瞬間の、かすかに潤んだ瞳、桃色に上気した頬、切なげにひそめた眉。焦点の合った双眸が俺を捉えるまでのほんのわずかな時間に浮かぶ表情がたまらなくて、恥ずかしそうに目をそらしたラムザが腕の中から逃げ出してしまうまで、一瞬でも見逃さないように眺めることにしている。
けれど、今回はなんだか勝手が違うようだ。大きな瞳に浮かぶ表情はわりと冷静に見える。視線が斜め上に泳ぐのは考え込んでいるしるしだ。小首を傾げて、何かに納得がいかないとでも言いたげなので、尋ねてみる。
「……どうかしたか?」
「うん……なんか、変」
そうかそうか俺のキスがあんまり上手くて変な気分になったか、というにはその冷静さが少々気になるわけだが、この際そんなことはどうでもいいのでとりあえず覆いかぶさろうとしたとき、ラムザはそのいい雰囲気を吹っ飛ばさんばかりの勢いで威勢良く両手を打ち合わせた。
「あー、そっか! こうすればいいんだ」
そのままその両手で俺の頬を挟み、船の舵でも回すみたいに力任せに捻る。耳元で頚椎が嫌な音を立てた。
うめき声を上げる間もなく、唇が塞がれる。突然の出来事に、俺としたことが状況を把握するのにしばらくかかった。あのラムザが自分から! 頚椎も逝ってしまいそうだが、その前に俺の理性が逝ってしまいそうだ。今日は祝杯だ。
すぐに唇を離したラムザの顔を、表面上だけは紳士を装って覗き込む。表情に含ませた疑問に気づいたのか、ラムザは言葉を探すように視線を泳がせた。
「……えっと……ほら、ディリータってこうするだろ?」
俺の頬に両手を添え、軽く傾ける。さっきの勢いのよさはなんだったんだ。照れ隠しだろうか、それとも夢中だったんだろうか。どちらにしても可愛い。たまらない。
「なんか、なんとなく違和感があって。僕はこっちの方がしっくり来るな」
ラムザはそう言って、俺の首を反対に傾けた。それに合わせて自分の首も傾けている。
「なんでかなぁ?」
キスを誘っているようにしか見えない仕草で人の下心を煽っておいて、この無邪気なセリフだ。反則だろ、と心の中で悪態をつきながら、つい笑い声を上げる。
「なるほどな……利き腕のせいだろ。左利きの俺にとっては、こっちに傾ける方がしっくり来るんだ。お前は右利きだから、逆になるんだよ」
「そうなの?」
ラムザはまだ納得がいかないらしく、俺の頬を両手で挟んだまま、首をしきりに左右に曲げている。
よし、誘っているんだな。あんまり関係ないけどな。
肩を軽く引き寄せて、少し首を伸ばしたら、もう射程圏内だ。
動きに合わせて揺れていた金髪が、ようやくおとなしくなる。
「……これでいいだろ?」
唇がかするくらいの距離で、声をできるだけ低くして囁いても、なかなかいつものたまらない表情を浮かべてくれない。ラムザにとって顔をどっちに傾けるかは羞恥心その他諸々を吹き飛ばすほど重要な問題なんだろうか。なんだか悔しい。
具合を試すように、右に傾けては顎を突き出し、左に傾けては顎を突き出し、同じ動作を二、三度繰り返して、根本的な疑問に思い至ったらしく、ラムザは神妙な顔で動きを止めた。
「なんで傾けるんだろ?」
思わず吹き出した俺の顔を見て、不服そうに唇を尖らせる。
「何だよ、ディリータ」
「じゃあ、傾けずに試してみろよ」
自分の鼻でラムザの鼻をつついてやると、ようやく納得がいったのか、黒目がちの瞳が輝いた。
「そっか、鼻がぶつかっちゃうからだね」
ああ、可愛い。俺のツボをここまで正確かつクリティカルにぶち抜けるのはお前だけだ。理性も何もかもかなぐり捨てて襲いかかりたい衝動に駆られるが、お前の前では常にかっこよく紳士なディリータでいたい。クールさはいらない。言葉も仕草もスマートに、かつ情熱をはちきれんばかりに込めて。
「上出来だ」
細い顎に手を添えて、指で唇をなぞったら、やっと白い頬に赤みが差した。そう、その表情だ。たまらなくなって肩を抱き寄せ、困ったような形の薄い眉にキスを落とす。
渾身のアプローチを軽やかにかわす天然ぶりも重要なファクターだけど、やっぱり肝心なときはこうでなくちゃな。
気づいて。気づいて。もっとよく見せて。
可愛い可愛い、俺の恋人。